Microsoft Azureは、さまざまなセキュリティソリューションを提供しています。その中でも「Azure DDoS Protection」と「WAF(Web Application Firewall)」は、多くの企業が利用する重要なサービスです。しかし、これらの役割や適用範囲には明確な違いがあります。本記事では、Azure DDoS ProtectionとWAFの基本、そして両者の違いについて具体的な例を挙げながら解説していきます。

Azure DDoS Protectionとは?

Azure DDoS Protectionは、DDoS(Distributed Denial of Service)攻撃からネットワークインフラを守るためのサービスです。DDoS攻撃は大量のトラフィックを発生させることで、ターゲットのサーバやネットワークを機能不全に追い込む攻撃手法です。この攻撃を防ぐために、Azure DDoS ProtectionはAzureプラットフォーム上のリソースに対して、トラフィックの監視と緩和(mitigation)を提供します。

特徴と機能

  • トラフィックの自動分析:Azure DDoS Protectionは通常のトラフィックと異常なトラフィックをリアルタイムで分析し、異常なトラフィックを自動的にブロックします。
  • スケールに応じた防御:大規模な攻撃にも耐えられるよう、Azureインフラ全体を活用して対応します。
  • 詳細なレポート:攻撃の詳細を把握するためのレポート機能が用意されており、事後分析に役立ちます。

例えば、オンラインゲームを運営している企業が突然DDoS攻撃を受けた場合、Azure DDoS Protectionは異常なアクセスを即座に検知し、正規ユーザーのアクセスを維持しながら攻撃を遮断します。

WAF(Web Application Firewall)とは?

WAFは、ウェブアプリケーションを保護するためのファイアウォールです。主にアプリケーション層(OSIモデルの第7層)を標的とした攻撃に対応します。SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)など、ウェブアプリケーション特有の脆弱性を狙った攻撃を防ぐことが主な役割です。

特徴と機能

  • ルールベースの保護:一般的な攻撃に対する既定のルールセットを持ち、特定の攻撃パターンを検知してブロックします。
  • カスタマイズ可能なポリシー:企業のニーズに合わせてルールを追加・変更できます。
  • ログとモニタリング:アプリケーションへのアクセスや攻撃の試行を記録し、状況を可視化します。

例えば、Eコマースサイトを運営している場合、WAFは顧客の個人情報を狙ったSQLインジェクション攻撃からデータベースを守るために利用されます。

Azure DDoS ProtectionとWAFの違い

Azure DDoS ProtectionとWAFは、それぞれ異なるレイヤーでの保護を目的としています。そのため、役割や適用範囲にいくつかの明確な違いがあります。

保護対象の範囲

  • Azure DDoS Protection: ネットワーク層(OSIモデルの第3層と第4層)を中心に保護します。DDoS攻撃など大量のトラフィックを処理することに特化しています。
  • WAF: アプリケーション層(OSIモデルの第7層)を中心に保護します。アプリケーションを狙った高度な攻撃から守ることが目的です。

適用される攻撃の種類

  • Azure DDoS Protection: UDPフラッド、SYNフラッド、DNSアンプ攻撃など、大量のトラフィックを伴う攻撃に対応します。
  • WAF: SQLインジェクション、XSS、CSRF(クロスサイトリクエストフォージェリ)など、ウェブアプリケーション特有の攻撃に対応します。

使用ケースの違い

例えば、オンライン動画配信サービスを運営している場合、以下のようなシナリオが考えられます。

  1. Azure DDoS Protection: 大量の偽装トラフィックを発生させ、サービス全体を停止させようとする攻撃を防ぎます。
  2. WAF: ユーザーの認証画面を狙ったSQLインジェクション攻撃を防ぎ、顧客データの流出を防止します。

両者を組み合わせたセキュリティ対策の重要性

Azure DDoS ProtectionとWAFは、それぞれ異なる役割を果たしますが、単体で使用するよりも組み合わせて利用することで、より強固なセキュリティを実現できます。例えば、WAFを設置するだけでは、ネットワーク層を狙ったDDoS攻撃に対して無防備です。同様に、Azure DDoS Protectionだけでは、アプリケーション層の脆弱性を狙った攻撃を防ぐことはできません。

まとめ

Azure DDoS ProtectionとWAFは、それぞれ異なるセキュリティ層を保護する重要なサービスです。Azure DDoS Protectionはネットワーク層を中心にDDoS攻撃を防ぎ、大規模なトラフィック攻撃に対応します。一方、WAFはアプリケーション層を保護し、SQLインジェクションやXSS攻撃といったウェブアプリケーション特有の脆弱性を防ぎます。両者を適切に組み合わせることで、ネットワーク層とアプリケーション層の両方を効果的に防御し、クラウド環境のセキュリティを最大化できます。

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